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雑想ノート

短文や感想(ネタバレ注意)。
創作・二次創作・ジャンル問わず雑多煮投下。
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竜にまつわる世界の話
何もないのも淋しいので。昔書いた創作ひとつ。友人が設定した世界の創作なのでちょっと特殊ですが。ファンタジーなのかなんなのか。自分でも分類不可能。1年以上前にかいたのだから文体とかかなり違いますが。キャラリスト作らないとオリジナルは難しいな・・・。自分用に覚書しとかないと。


「自分から行動を起こさなきゃ、何も変わらないよ」
そう言って、貴方は笑った。


出会いと別れが入り混じる三月下旬の小春日和。うららかな陽射しの元、憂鬱そうな溜め息を小さく吐きながら金髪の女、帝国魔法師団第九師団長イレーネ・ルクイェンは窓枠に頬杖ついて渡り廊下を行き交う人々を眺めていた。
晴れすぎた青空が目に染みる。

旧第五医務室。
帝都ツィルギスの城の南に位置する帝国軍第三棟に存在する、軍の三階の端にあるその部屋は今は使われていない。イレーネが埃の積もっていたそこに足を踏み入れ、淀んだ空気を払い除けるように窓を開け、早一時間。
追悼式にどうしても出席したくなかったイレーネは体調不良を理由に土壇場で開場を飛び出してきた。そのため皆の元に還るわけにもいかずどうしようか迷ってここに辿り着いた。かと言ってこのままずっとここにいるわけにもいかない。
自室だろうが執務室だろうが逃げる場所は幾等でもあったのに何故この場所にきてしまったのだろうとイレーネはふと考えた。

ここに来たのは久しぶりだ。
七年前、彼女が生きていたころはよく入り浸っていたのに。彼女がいなくなってから自分の意思で足を運んだのは初めてではないか、と考える。この部屋の主、ゲイルシュア・ゼラムが亡くなってからイレーネはアルトナの付き添い以外で一度もここに来たことはなかった。

どうしてかは分からない。
ただ下らない感傷で彼女の記憶を壊してしまいたくなかったのかもしれないし、もしかしたら彼女が死んだということもまだ認めたくないのかもしれない。

七年前のあの日イレーネ達が見つけたゲイルシュアは面影を僅かに残しただけの無惨な姿で雨に打たれて死んでいた。死因は裏切り者であるエゾルテ・タークスとセラータ・アトエントが与えた裂傷だと上から聴いた。
イレーネはそれが納得出来ず、司法解剖に立ち会ったジェノスに食いさがり本当の死因を教えろ!と上官たちの前で胸ぐらを掴みあげた。
それくらいイレーネには信じられなかった。あんなに仲の良かったセラータがゲイルシュアを斬り刻んで殺したなど。少なくとも反乱鎮圧で共に戦った二人は楽しんで人を殺すなんて出来るようにはみえなかった。
けれど機械的ともいえる淡々とした声でジェノスが告げるのはあの二人の武器と傷が一致し、二人の武器にゲイルシュアの血が付着していたという冷たい言葉だけで。
上司であるレセシュリアの止める声も聴きいれずイレーネは裏切り者だの腰抜けだのとジェノスに叫んで掴みかかった。
それが元でイレーネは3日間の謹慎処分を受け、その間に何もかもを闇に葬るようにゲイルシュアの葬儀は終わっていた。
今冷静になってジェノスの立場で考えれば彼はああいうしかなかったのだ、とイレーネは思う。だってそうでなければ今度はジェノスが殺されることになっただろうから。
上層部もジェノスならば自分達の言うことを聞くだろうし、手足として働くと見込んだのだろう。事実、ジェノスは命ぜられるがままに任務をこなしている。
ただ、ひとつだけジェノスが抵抗したことがわかるのはこの部屋をそのままにして置いたことだ。
上層部は当時この部屋に何か重要物があると主張し鍵の提出をジェノスに命令した。
医務室には危険な薬品も多い。そのため部屋には封紋術と最高位の防御系結界術が扉にはかけられておりドアは各責任者が持っている鍵以外で開けることが出来ない。
鍵はスペアを含めてふたつあり、ひとつは隊長であるゲイルシュアがもうひとつは当時の統括軍団長エインセア・レヴェナークが持っているはずだった。鍵は双方とも行方が分からず結局脱獄犯のS級罪人の二人が持ち去ったのだろうと上層部は結論に達し皆納得した。イレーネ達戦友を除いては。
イレーネ達はゲイルシュアがジェノスに鍵を引き継がせるのを見届けた。あの南の反乱鎮圧の最中、何人もの仲間達がジェノスが鍵を持っていることを知っていたが誰も上層部に告げなかった。それくらい、皆理不尽だと思っていたから。上の傲慢な態度を。
皆知っていたから。第五医務室の主はひとりしかいないことを。

今でもここはゲイルシュア・ゼラムの聖域であり誰であろうと崩すことは叶わない。


イレーネが視線を上に向ければ、雲ひとつない青空に線を描くように白い鳥達が群れを成して飛んでいく所だった。
その中の一羽が群れから離れイレーネの方へ飛んで来る。その鳥は右の翼に紅紫の羽が何枚か混ざっている。イレーネの良く知る人物の式紙である証だ。
伸ばしたイレーネの左手にそれは止まり瞬く間に封筒へと姿を変えた。

白いシンプルな封筒にはえんじ色のラインが二本引かれている。
それには紫の花の描かれた栞と便箋が一枚入っていた。
便箋には定例と殆んど変わらぬ送り主の近況報告が綴られている。

『拝啓、戦友たちへ。』

送り主の性格を表すような簡潔な文面のそれに苦笑してイレーネは栞を手に取る。
臙脂色の髪を持つ戦友は変わらずに旅をしているらしい。
栞の紫の花はある男の好んでいたもので。彼等がここにいた頃には良くこの部屋にも飾られていた。暖かい気候の清い水辺に生息するというその花はこの北の大陸で咲く場所は限られていた。イレーネは良く知らないが、多分生息区を知っていたのはジェノスとこの花を好んだティルテターナー位だ。
皆元気でやっているのだろうか。
各々の目的を果たすためにあるものはある者は帝国に残り、ある者は旅にでて。
再会を誓いはしたけれど。イレーネは不安になる。
こんなことで、本当に大丈夫なのかと。


あの日誓いを交わした戦友達はあれから7年も目的を果たすための方法を探している。けれど、未だ欠片のひとつもみつかっていない。不安になるのだ。イレーネは。
このままみつからないのではないかと考えてしまうのだ。何度振り払っても、その思いは消えない。

そんな風にマイナスな思考においやられるのは自分らしくないとイレーネは自覚しているし知っている、けれど不安は拭えない。
怖くて恐くて仕方ない。いつか、帝王に気付かれてしまうのではないかと。なにも行動をおこさないうちに、大切なものが踏みにじられてしまい、自分はなにも出来ないのではないかと。

もしもここに手紙の送り主がいたらなんと言うのだろう。下らない、そう一蹴してくれるのか。もし、もしここにゲイルシュアがいたらなんと言ってくれただろうか。悪いことはかんがえると現実になってしまいますよと優しく諭してくれるのか。あぁ、でもこんなの所詮妄執でしかない。だって彼女達は実際ここにはいないのだから。

ふ、とそこまで考えマイナスな思考を振り払うためにイレーネは無理矢理同封されていた栞へ視線を映した。

紫の花は戦友を思い出す。イレーネは栞を裏返し、仇とでもいうように睨みつける。少しでも興味がそちらに削がれればよかったのに、駄目だ。堕ちた思考をプラスにもちあげるのは難しい。見えない底無し沼に引きずり込まれているみたいだ。

と、栞から何かが浮き上がったようにみえた。よく見れば、文字らしき紋様の羅列が浮かんでいる。栞と殆んど変わらない薄墨色の、一見模様にしか見えないそれは失われた言語のひとつでジェノスの祖国のものだ。古代語を学んだものにも読むことのできない複雑なそれは内緒の話をするには丁度いいとアルトナが無理を言ってジェノスから教わり、以後仲間だけの暗号になっていた。恐らく重要な情報であるそれにイレーネはむぅ、と小さく声を挙げてから解読に取り掛かった。



『仔竜を見つけたよ』

がたん、イレーネは椅子を蹴って立ち上がる。
皆に知らせなくては、振り向くと同時に扉ががらり、と音をたてた。錆び付き始めたこの部屋の扉には開け方にコツがいる。下手にあけようとすると外れそうになるよとイレーネは以前アルトナに聞かされていた。
そしてその言葉通り、扉は外れゆっくりとイレーネの方へ倒れてくる。
僅か10センチ程隙間をあけて扉を外した本人によって伸ばされた手に扉は押さえられた為にイレーネは額を打たずに済んだ。
驚きの後にイレーネの心に沸き上がり襲いくるのは怒りで。

「……っ、キャナ!」
「うわ、イレーネ。何で俺が外したってわかった!?」
「わかるわよこの馬鹿男!ここに来るのは私たち四人しかいないじゃない!アルトナは学習するしジェノスにいたってはそんな力馬鹿みたいなことしないわよ!」
「…っ、馬鹿いうな!貧乳女!」
「はぁ?Cカップは普通貧乳っていいません!まだまだでかくなるわよ、この馬鹿!」
「うんイレーネは最高だよな。それは俺が一番知ってるよマイスイート。頼むから中入れてくれる?」

怒鳴り合うイレーネとキャナの間にアルトナは身を滑り込ませ両手に持つものを二人に示した。
二つのポットとバスケット。バスケットからは甘い香りが漂っている。

「イレーネ、お腹空いただろ?メリさんの手作りクッキーとマフィン。持ってきたからお茶飲まない?」
「メリさんの?」

キャナの首を絞めていたイレーネはくるりとアルトナの方を見て目を輝かせた。
ぱっとアルトナのもつバスケットに手を伸ばす。
いつの間にか部屋に入っていたジェノスが持っていた例の紫の花を花瓶に無造作に生けている。床に倒れて首をさすっていたキャナがイレーネのジャケットの胸ポケットから見える封筒を一別してアルトナに呼び掛けた。

「アルトナ」
「え?」

イレーネの横に座りこみ、持ってきたバスケットから取り出したプラスチック製のコップに紅茶を注いでいたアルトナは間の抜けた声をあげる。
察したジェノスが椅子に座りながらイレーネに語りかけた。

「イレーネ、それ。ゼロウから?」
「あ、」

元気にやっているのかと年寄り臭く呟いたキャナに無視をしてイレーネはクッキーの粉のついた手で手紙を掴みアルトナに渡す。

アルトナは便箋に視線を走らせたあとに栞を眺める、裏返してイレーネがしたのと同じように口にだして暗号のようなそれを解読する。

「『こりゅうをみつけたよ』……っ、これ!?」
「うん」
「マジかよ…っ」
「……ゼロウは嘘を吐かない。恐らく、」

アルトナの目が見開かれ確かめるようにイレーネを見た。イレーネは小さく頷き、それを聞いたジーナが栞を覗きこむ。
あまり動揺しないジェノスですすっていたコーヒーをテーブルに置いて床に座り便箋を確かめている。


「っ、ゼロウがやってくれたってことは次は俺たちが準備をする番だね」

アルトナは顔をあげ仲間達をみやる。
ジーナとイレーネは頷き返し、ジェノスは口の端に笑みを乗せながら便箋にも書いてあったらしい古代語をメモ帳に写していく。

「なんだか、がんばれる気がするよ」


ひとりごとのように呟いて口の中で言葉を反芻しながら、イレーネは先ずは腹が減っては戦が出来ぬっていうし、とバスケットの菓子に手を伸ばした。


空は相変わらず青く澄みわたっていたけれど、不思議とあの冷たさは何処かに消えてしまっていた。

Posted by 藍和
雑記 / 19:02 / - / -
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